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医療法人 誠志会 砥部病院

砥部病院
〒791-2114
愛媛県伊予郡砥部町麻生40-1
TEL:089-957-5511
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平成25年

2013/05/01
H25 No.4

新しい文化 その2

 

 前回、パーソン・センタード・ケアの新しい文化 その1「認知症の症状は障害としてみるべきである。症状の進行はケアの質に決定的に依存する」を紹介し、皆さんの鋭い観察力に基づいた良質なケアの体験談を書いていただきました。どの人の体験談も素晴らしく、私は、皆さんのことを誇りに思っています。

 ある人は、夕方になると廊下や玄関を行ったり来たりしているAさんのことを書いてくれました。若くして亡くなった娘さんを探していたということがわかったのですが、見守ることしかできなかったそうです。ある日、忘れ物をして病院に帰って来たスタッフが玄関を入る時、Aさんに出会い、「ただいまAさん」と言うと、「Bちゃん、やっと帰って来たのね」とうれしそうにされたそうです。それからはAさんが不穏になった時、スタッフが娘さんになりきってケアをすると、Aさんはウロウロすることが少なくなったということです。

 Mさんの話にも興味をひかれました。いつも食器の後片付けや机の上を拭いてくれていたMさんが、他の人の食事介助をしようとしたところをスタッフが止めました。それからというもの、ゆっくり食事をしている患者さんとケンカしたり、「もーこんなに落として汚い」と怒ったりしていたそうです。それが治まったのはスタッフ全員がMさんに対して、後片付けのお礼を言うようになったからだそうです。砥部病院においても素晴らしいパーソン・センタード・ケアができていると思いませんか。

 今回紹介する捨て去るべき古い文化は「認知症に関して最も知識を持っているのは医師であり、医師の指示に従うべきである」です。取り入れるべき新しい文化 その2は「認知症の人を一人の人間として認め、十分な知識を持っているのは一番身近にいつも居る介護者である。その人の性格、生活歴、健康状態、人間関係に思いを巡らせれば、今その人が示している状態の理解の仕方、アプローチの仕方は無限にあることに気付かなければならない。医師の指示を待っているだけでは、とても信頼され、適切な知識を持つ介護者とは言えない。認知症の人に対して、最も頼りになり、知識を持っているのは、ケアのための十分な技術を持ち、いつも、何故こういう行動をとるのかと考えることのできる介護者である」なのです。加えて、自分が悲しかった時、認知症の奥様にしっかりと抱きしめてもらったことが、涙が出るほどうれしかったという体験を書いてくれた人がいます。ケアをする側、される側ではない人間的な関わり合いを私たちはこれからも大切にしていこうではありませんか。

 今回はこの麻生だよりに対しての感想を提出していただければうれしいです。

平成25年4月24日

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