平成24年
今年の忘年会は非常に盛り上がりました。幹事の皆さんが、夜遅くまで話し合い、現役の高校生の制服のウエストを15センチ広げ、DVDを見ながら激しくも厳しい踊りの練習をしてくれたお陰と感謝しております。
ある会社の社長は、経営は順調、4人の子供に恵まれ、家庭内もうまくいっていると思っていました。そんな矢先、奥さんよりいきなり「離婚して下さい」と言われました。「あなたと一緒に居ると息苦しくなるの」ということでした。社長は今までの事を振り返りました。妻が何か話しかけてくると、「結論は何か。結論を先に言え」と言っていたそうです。奥さんの言うことなど取り合わず、自分は会社で必死にがんばっているのだからと、家庭内のことはすべて妻にまかせていました。離婚を避けたい社長は信頼できる人のところへ相談に行きました。「あなたは今まで奥さんの言うことを聞いてあげた事などないのだから、最後ぐらい願いを聞いてあげなさい」と言われました。「それは離婚しなさいということなのですか」と社長が聞くと「そうです」という答えが返ってきました。家に帰り社長は奥さんに、「離婚するのを一日だけ待ってくれ。何処かに行こう」と言ったところ、「私家具屋さんに行きたい」と言われたそうです。家具屋で奥さんは「これいいよね。あれもいいね」と大変嬉しそうでした。社長はこんな奥さんの表情を見たことがありませんでした。その夜、社長は奥さんに「足をもませて欲しい」と頼みました。つま先から足をもんでいると、社長は涙が溢れて止まりません。今までこんなことを奥さんにした事は無く、社長にとって奥さんは空気のような存在だったのです。自分の仕事が忙しくなるとついつい妻にあたってしまった自分を深く反省しました。次の日、離婚届を目の前にして「あなたに執行猶予をあげる」と言われ、社長は大喜びだったそうです。
この社長の夫婦関係において何が必要だったのでしょうか。それは奥さんの言うことに耳を傾け、奥さんの感情に共感することだったのではないでしょうか。不登校の子供に対してその親は「なぜ、学校に行きたくないの」「学校で何があったの」「ねえ、何か言わないと解らないじゃないの」と問い詰めます。それで解決した試しはありません。そうではなく、「お母さんもそんな時があったわ」と子供の気持ちを受け止めてあげることが何より大切なのです。
私たちは認知症の患者さんの気持ちの発露を受け止め、情緒や感情を共有すると不思議と患者さんが落ち着くことを知っています。仕事のスキルが家庭内でも恋人同士でも応用できるとは素晴らしいことだと思いませんか。
寒いねと言えば寒いねと答える人のいる暖かさ(俵万智)
この暖かさが実は実は砥部病院の治療の原点なのです。
平成24年12月24日