平成24年
昨日、中村時広県知事主催の「えひめ志高塾」へ行ってきました。大畑誠也先生の講演に感動、最後は涙で前を向いて先生の顔が見られなかったのですが、その内容について報告します。
大畑先生は教育者です。「自分は実践家であるから、実行したことのみを話す」と言われ、ずっと熊本弁で、「ちゃかちゃん、これがポイントたい」と言われながらしゃべり続けられました。
校長として赴任された菊池高校のことを中心に講演されました。菊池高校の生徒は、挨拶ができない、女生徒はなま足で靴のかかとを踏みつぶし、スカートは短く、だらしない格好で歩き、こんなことでは、近所の人が見て、この学校に子供や孫を行かせようとは考えないだろうと思ったそうです。ちょうどその頃テレビで立花隆が「21世紀に求められるのは悪戦苦闘能力である」と言っているのを聞き、この能力を高めるために5つの重点事項を定めました。すなわち、①挨拶②体力③感性④集中⑤思考です。
①挨拶は、コミュニケーションのスタートラインです。21世紀は人間関係を制するものがリーダーとなります。「朝から親に挨拶できんもんが、どぎゃんして世の中の役に立つ人間になれようか」と言われ、「親に挨拶運動」を展開し、2年目に90%に達したそうです。
②体力は、朝ご飯を食べる事から始まるとして、朝食を食べて来なかった生徒に炊き出しを行いました。「朝食食うぞキャンペーン」を全校に普及させるための手段として一番効果があったのは、ポスターでも標語作りでもなく、作文発表会だったそうです。
③感性とは、人の気持ちを理解する能力です。お年寄りや被災者の気持ちがわからない政治家が失言して失脚した例がたくさんあることをあげられました。感性を磨くため生徒全員に、家の手伝いを奨励しました。家の手伝いをするということの効果は、1)家での存在感、役割の自覚 2)仕事の段取り、手順の理解 3)親に対する感謝の気持ち、思いやりの心を育みます。「親の気持ちが解らんもんが、将来、人の気持ちが解る人間にはなれんばい」ということでした。
④集中力とは、一生懸命にやるということです。思いや目標がなければ、ひたむきさは生まれません。心の中に浮かんでは消える「思い」から、一定の方向と持続性を持った「想い」、そして自分の考えや理念、哲学、生きる指針となる「念い(おもい)」に進化させることが大切だと言われました。真民先生の「念ずれば花ひらく」に通ずるお考えだと思いました。
⑤思考は主体性を持つために重要です。世の中で「指示待ち族」と言われる人がいかに多いかということを話されました。主体性を持って働くためには、自分の考えを持つことが大切です。自分の考えは、第一に本を読み、第二に人の話をメモしながら聴き、いろいろな考えをストックしていくことが重要です。それらを自分の中で発酵させ、熟成させた時、それは自分の考えになると言われました。
菊池高校では校長先生が「21世紀とは」と叫ぶと生徒が「菊池高校の時代」「求められるのは」と言うと「悪戦苦闘能力」、「一つ」と校長先生が言い「挨拶」と答え、順に「二つ」「体力」、「三つ」「感性」、「四つ」「集中」、「五つ」「思考」とやっているようです。この取り組みは、国立大学合格者数を伸ばし、評判が評判を呼び、全国から見学者が来るようになりました。すると注目されているという意識から生徒は挨拶がますますきちんとできるようになり、スカートも長くなりました。
最後に21世紀に一番求められる人は「意気に感じる人」と言われました。大きな声で返事する人は着手が早い、行動も早いそうです。高杉晋作の「意気人を変え又人を呼ぶ」、吉田松陰の「志定まれば気盛んなり」の言葉を引用され、我々大人が「人生、意気に感じて生きること」を見せれば、日本の子供達が志を持ち、日本は変わるというメッセージをいただきました。「人間の能力に差などほとんどない。違いがあるのは日常生活や志の高さ、思いの強さである」ということでした。
私たちも砥部病院の仕事を通じて、意気に感じて人生を送り、吉田松陰が「松下陋(ろう)村といえども誓って神国の幹とならん」と塾に記したように「砥部の田舎の病院といえども、誓って将来の日本の介護、福祉、医療を背負って立つ病院になろう」という気概を持って、私たちの使命を果たしていこうではありませんか。
平成24年10月24日