;

医療法人 誠志会 砥部病院

砥部病院
〒791-2114
愛媛県伊予郡砥部町麻生40-1
TEL:089-957-5511
FAX:089-957-5542

平成24年

2012/01/30
H24 No.1

 研修医の八鹿先生が、幸せな新婚旅行に旅立たれた次の日、日直をしていた時のことです。この3ヶ月二人で診療をしていたものですから、寂しくて、寂しくてたまらない朝に、お腹が痛いとおばあちゃんが診察に来られました。「昨晩はお腹が痛くて眠れなかった」と言っておられました。触診をすると確かに心窩部に圧痛があり、胃薬を出して様子をみさせていただこうかとも思いましたが、ある言葉を思い出しました。「高齢者の腹痛は心筋梗塞を必ず否定せよ」です。これは、私がこの3ヶ月間研修医の八鹿先生に繰り返し言っていた言葉でした。八鹿先生ならどうするだろうかと考えながら、念のためにと心電図をとりましたが、心筋梗塞の所見はありません。もう一度横になって腹部の触診をさせていただいた時、「先生、またお腹が痛くなって来た」と言われました。そこでピンときて「ニトロを舐めてみて下さい」とニトロペンを舌下していただきました。すると「あれ、先生治った」と言われました。腹痛の原因として、狭心症が強く疑われました。そこで、今日の救急病院はどこかと調べると済生会松山病院で、循環器部長の渡辺先生に早速電話をしました。「ニトロを舌下すると治る腹痛のおばあちゃんで、このまま年末に入ると恐ろしくて、恐ろしくてたまらない」と言うと「すぐに送っておいで」との返事でした。息子さんに車で連れて行っていただきました。その後、渡辺先生から「心臓の血管が3本詰まっとったよ。そのうち1本は99%狭窄があり、ステントを入れた。あとの2本は入院してもらってゆっくり治療するよ」という電話をいただきました。そこまでひどいとは思っていませんでしたので、鳥肌が立ちました。あの時胃薬を処方して帰宅していただいていたら、大変なことになっていたでしょう。

 人は自分を映す鏡であるとよく言われます。私は八鹿先生に「高齢者の腹痛を診たら心筋梗塞を必ず否定せよ」と教えました。しかし、この言葉は今回、キラキラ輝く八鹿先生に反射して私に返ってきました。人を教えると言う事は、自分に言い聞かせるという事であったとつくづく考えさせられた出来事でした。

平成24年1月24日

 

砥部病院

〒791-2114 愛媛県伊予郡砥部町麻生40-1

TEL:089-957-5511 FAX:089-957-5542

Copyright(c) tobe hospital, all rights reserved.