「睡眠時無呼吸症候群」の診断が入院しなくてもできるようになったとのことで、検査室の渡邊那由美先生から、フィリップスの齋賀結里（さいがゆうり）さんを紹介してもらいました。齋賀さんは、２０年前に砥部病院に愛媛県立医療技術大学から、臨床検査の研修に来ていた女の子です。久しぶりの再会でした。
　今から２５年前、広島県三原市にある興生総合病院に勤務していた時、小顔の可愛らしい看護師さんが私の外来を受診しました。主訴は、「朝起きた時に身体が重たい、だるい」でした。その友人が泊まりがけで遊びに来たとき、「あんた、どしたん、イビキがすごいよ。朝方、全身がケイレンしていたよ」と言われたとのことで、「睡眠時無呼吸症候群」を疑い、その分野を専門としている鳥取大学の教授に紹介状を書いたことを思い出します。
　自分は違うと思いながら、試しに睡眠時無呼吸の検査をしてみました。指にSpO2のサック、腕時計のような計測器を巻いて、10円玉のシールを胸に貼るだけです。
　検査結果は詳細にわたります。呼吸が止まっている回数、時間、その時SpO2が何パーセントまで低下しているかがわかります。仰向けに何時間、うつ伏せで何時間、右側臥位で何時間、左側臥位で何時間と寝相まで記録されています。また、レム睡眠（身体の休息）、ノンレム睡眠（脳の休息）の割合まで判定されています。
　結果を聞くと、齋賀さんから、「一発アウトです。完璧な睡眠時無呼吸症候群です」と宣告され、次の日から、CPAP（Continuous Positive Airway Pressure 通称　シーパップ）という人工呼吸器を装着して眠ることになりました。
　今日こそ良く眠ろうと睡眠薬を服用したことがありますが、次の日の身体の重たかったこと。睡眠時無呼吸で途中覚醒する人は、睡眠薬を服用すれば、ますます無呼吸状態を悪化させるということを自分の身をもって体験しました。また睡眠時無呼吸になれば、ホルモンバランスが崩れ、体重も増えるとのことです。肥満になって気道が狭くなり、無呼吸を生じると、益々肥満になるという悪循環となります。
　私の発作性心房細動も、高血圧も、高脂血症も、食欲があるのも、イビキも、寝言も、寝相の悪さも、午後の眠気も、全ての原因は「睡眠時無呼吸」にあったのです。
　教え子に教えられるとは、このことです。２０年前、男を殴って骨折していた齋賀さんを優しく指導してあげて良かった、とつくづく思います。妻もうれしいらしく、「シーシーパップ、シーパップ」とスズメの学校の先生を歌っています。

　令和4年7月24日