令和3年
人は多方面から評価されなければならない。過ちは改むれば、これ過たざるなり。
数年前の話になるが、自転車で車と衝突し、救急車で県病院に搬送されたおばあちゃんがいた。打撲だけだったが、入院を希望したため当科に紹介された。
入院時の検査で糖尿病が、かなり悪い。県病院でも糖尿病のコントロールはできていなかった。せっかく入院したのだから、インスリンでコントロールすることを提案した。食事療法とインスリン投与により、血糖コントロールは良好となった。
数日後、この方を担当の損保ジャパンの高藤さんから、電話があった。おばあちゃんは、自分の糖尿病が悪化したと言うらしい。県病院の外来では、飲み薬だけだった。インスリンを使わないといけないくらい糖尿病が悪化したのは、あの事故に遭って、運動療法ができなくなったからである。血糖値がもっと落ち着くまで入院を続けると言い張っているとのことだった。
損保ジャパンとしては、このままズルズルと入院費を負担することはできず、どこかで折り合いをつけてくださいと私に懇願してきた。おばあちゃんに、あと1か月だけ入院を延長することで了解をとりつけた。
おばあちゃんが退院して数日後、高藤さんから電話があった。「実は、自分はあのおばあちゃんがうらやましかった。私は糖尿病が悪く、血圧も高い。入院して治療をしてもらいたい」と言われた。
入院後、CEAが高い。大腸の検査で回盲部に小ポリープがあり、これをポリペクトミーした。クリップで止血もしたのだが、翌朝大出血した。この時、早朝の呼び出しにもかかわらず来てくれたのが森永さんだった。高藤さんは180あった血圧が一挙に120まで下がった。森永さんに手伝ってもらって、再止血できた。高藤さんには、血圧も下げてもらった、と喜んでいただいた。現在、佐世保で悠々自適の人生を送っている。
また、市内の循環器科でステントを挿入中、下血が始まり県病院に紹介された人がいた。県病院の玄関で暴れて、手に負えないと夜遅くに当科に紹介された。森永さんが残ってくれた。暴れても力持ちの森永さんが居れば大丈夫だし、森永さんが上手に患者さんをなだめてくれて入院させることができた。
外来で森永さんに、砥部病院は何回も助けられている。砥部病院の評判が良くなったのは森永さんのおかげである。名実ともに外来の大黒柱であり、緊急時に、時間外でも喜んで対応してくれる森永さんは貴重な存在である。
令和3年10月24日