令和2年
令和2年7月26日昼過ぎ、私は高齢者総合福祉施設森の園で新型コロナウィルス濃厚接触者の検査を依頼され、18人の濃厚接触者の検査をしてきました。
何故、私が森の園へ行かなければならなかったか。話は30年前に遡ります。
その時、私は愛媛大学医学部の大学院生でした。研究が一段落した時、外が騒がしいことに気がつきました。大学の東門に行くと、5歳くらいの子供たちが、「一人いなくなったの」と言っています。大学の周囲を流れる水路は雨のため増水していました。近所の人たちは「小さい子供の言うことをどこまで信用して良いのだろうか」、「もしかして、この中に落ちて流されたのだろうか」と言うものの、なんの救助に向けた行動も起こしませんでした。
そこに、温泉郡(現東温市)選出の柳沢正三県議が消防団を引き連れ、さっそうとやってきました。消防団員を前に、「この川はどこに流れとるか」と大きな声で聞きます。消防団員は「はっ。海であります」と答えました。「それなら、この道沿いのマンホールをせんぶ開けていけ」と指示しました。団員が2つ目のマンホールを開けたところ、子供がステップに捕まっていたのが発見されました。もし、あの時、柳沢正三県議が現れなかったら、その子は助からなかったことでしょう。
数年前、森の園から柳沢施設長が協力病院の依頼に来た時、私が「柳沢正三県議を知っていますか」と聞くと、「私の父です」という答えが返ってきて、びっくりしました。学生時代に感動したお父様のリーダーシップについて熱く語り、協力病院になることを快諾した次第です。
森の園では、ガウンを着てマスクをし、ゴーグルを付け、手袋をしました。この順番が大切です。暑さで汗をかきながら、手袋の上に手袋をして、二重にし、外側の手袋は患者さんごとに換えました。患者さんの右横に立ち、患者さんのマスクを鼻だけ出るようにずらし、右手を伸ばして鼻孔からまっすぐに綿棒を挿入し、咽頭壁に当てて10秒待てば終了です。装備をして患者さんの飛沫を浴びないようにして、脱ぎ方さえ間違えなければ、新型コロナウィルスには絶対に感染しませんし、拡散もさせません。あのクルーズ船の中で、自衛隊員は一人の感染者も出しませんでした。
中村愛媛県知事は、「新型コロナウィルスを恐れすぎず、正しく恐れよ」と言っています。私たちもそうあるべきではないでしょうか。
令和2年10月24日