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医療法人 誠志会 砥部病院

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令和2年

2020/03/03
令和2年No.2 あ、

 2月14日、第99回愛媛教育研究大会が、愛媛大学教育学部附属中学校で開催され、私は母校附属中学校の評議員として、この会に招待されました。公開授業はどれも興味を引くものでしたが、特に細川美穂教諭の国語の授業は私も一生懸命に考えました。
 「挨拶ー原爆の写真によせて」を題材に、「作者の石垣りんさんが一番にこだわったと思う言葉はどこか」と中学3年生の生徒に問う授業でした。

                 挨拶ー原爆の写真によせて

        あ、
        この焼けただれた顔は 一九四五年八月六日 その時広島にいた人
        二五万の焼けただれのひとつ すでに此の世にないもの
        とはいえ 友よ 向き合った互いの顔を も一度見直そう
        戦火の後もとどめぬ すこやかな今日の顔 すがすがしい朝の顔を
        その顔の中に明日の表情をさがすとき 私はりつぜんとするのだ
        地球が原爆を数百個所持して 生と死のきわどい淵を歩くとき
        なぜそんなにも安らかに あなたは美しいのか
        しずかに耳を澄ませ 何かが近づいてきはしないか
        見きわめなければならないものは目の前に
        えり分けなければならないものは 手の中にある
        午前八時一五分は 毎朝やってくる
        一九四五年八月六日の朝 一瞬にして死んだ二五万人の人すべて
        いま在る あなたの如く、私の如く やすらかに 美しく 油断していた。

 みなさんはどの言葉と思いますか? 私は、最後の一文だと思っていましたが、議論の終盤に一人の生徒が、「冒頭の『あ、』は、どうでもよい言葉、あってもなくても困らない。しかし、わざわざ最初につけている。この『あ、』こそが、作者の一番こだわった言葉である」と発言しました。周りの生徒たちは大笑いしていましたが、私の考えは揺れ動き、平和ボケしている私たちに、「あ、」と気づかせるために、この言葉を最初に付けたのだと思うようになりました。私も「あ、」派ですと言った時の細川先生の満面の笑みは忘れられません。
 この詩を自分のこととして捉え、主体的に考え、自分の言葉で堂々と発表し、他人の意見も素直に受け入れ、さらに自分の考えを深めていくという参画型の授業でした。
 厚生労働省の唱える、地域の問題を我が事として参画し、人と人が丸ごとつながることで、住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに作っていく社会、「我が事・丸ごと地域共生社会」を担う若者が、今、ここに、着実に育ってきていると感じた次第です。

 令和2年2月20日

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