名誉院長の麻生だより
1.疑わしきは行動せよ
2.常に最悪の事態を想定して行動せよ
3.空振りは許されるが、見逃しは許されない
これは、防災の3原則。普段からこの心がけをしておくことが肝要です。普段できていないことは、本番でもできないのです。
お花見へ行くバスの中、平成2年4月28日生まれの曽我部聡君はずっと、うつむいたままでした。
理由を聞くと、昼間、花見のお酒を台車に乗せて運ぼうとした時、本館裏のグレーチング(金属をすのこ状にした土木建築材)の所で、台車が急に止まり、お酒1本が前に飛び出して割れてしまったとのことでした。
私はてっきり、グレーチングの格子目の中に台車の車輪が入り込み、急停止してしまったのだと思いました。そういうことがないようにと、格子目を細かくしたグレーチングを一つ置き、車椅子はここを走行するという約束があるのに、何故それを守らなかったのだろうと思いました。(新人教育でも実地指導をお願いします)
ところが、よく話を聞いてみると、格子目の中に車輪が入り込んだのではないと言います。
翌日、曽我部君と現場を見に行きました。「疑わしきは行動せよ」です。アスファルトとグレーチングを支えるコンクリートの間の段差があり、ここで台車が急停止したとのことでした。
「最悪の事態」を想像してみました。もし、お酒でなく患者さんを乗せていれば、車椅子から投げ出され大けがをしたことでしょう。
車椅子は格子目の細かいグレーチングの所(一箇所あります)をゆっくりと走行する。アスファルトとコンクリートの段差に注意を払う。投げ出されないように患者さんにはシートベルトをつけてもらう。など、の対策を講じることが大切だと改めて思いました。
「医療安全は何ものにも優先する」とは、日常の小さな出来事も「見逃さない」で、自分の問題として捉え、医療安全に結びつけて考えるという心を、職員ひとり一人が育むことなのだと思いました。
曽我部君の小さな失敗は、車椅子事故の教訓そのものでした。
もうすぐ29歳になる曽我部君、おめでとう。そして、ありがとう。
平成31年4月24日