名誉院長の麻生だより
毎年、私の解剖生理学の講義は、中村文昭を熱く語ることから始まる。もし30年前にこの人に出会っていれば、私の人生は大きく変わっていたことだろう。それ故、看護学生たちに、今、若い時に、この人の考えに触れてほしいと思う。職員のみなさんも中村文昭の講演「お金ではなく人のご縁ででっかく生きろ」をYou Tubeで見てほしい。
中村文昭は高校生のときは「やんちゃ」で、やりたいことも何もない、夢も希望もなく家出同然に東京に出た。最初に友だちになった人は、自転車泥棒の疑いをかけて自分に職務質問をしてきた警官である。その警官と焼鳥屋で食事をしているとき、人生の師匠と出会う。その日のうちに弟子入りし、野菜の行商をしながら、その師匠から「人を喜ばせることで夢を手にいれよ」という哲学を授かる。
中村は社会に出てから最も必要な力は「人間力」であると言う。「人間力」とは「あの人から看護を受けたいな」「あいつがやるなら力になりたいな」「あいつがやるんだったら、きっと奇跡を起こすぞ」という「人をひきつける力」である。この「人間力」を身につけるためには、「幸せの法則」と同じ、まず人を喜ばせること。喜ばせて、喜ばせて、喜ばせて、それが回り回って「人から愛される力」が自分に宿る。
現在の中村文昭はウェディングレストランを4軒経営し、年間講演回数300回(1回の講演料は50万円から100万円)をこなし、今年はアメリカ、ドイツでの講演も依頼されている。18歳のとき、夢も希望もやりたいことも無かった中村がこれだけの役割を授かったのは、「今、目の前にいる人を喜ばせる」ことに集中したからである。
人を喜ばせる4つの鉄板ルールがある。
①返事は0.2秒。自分の損得勘定を捨てて、すぐに返事をする。
②頼まれごとは試されごと。頼まれたら、自分は試されていると思って、その人の予測を大きく上回る時間と質で応える。
③できない理由は言わない。できない理由を探すより、まずやってみる。
④今できることをする。今、小さなことでもいい、できることを見つけて行動してほしい。そうすれば、積み重ねの人生が始まる。「そのうちやろう、そのうちやろう」では、繰り返しの人生になってしまう。
人から「ダメ」と思われるか、「こいつは見込みがあるな。自分のすべてを教えてやろう」と思わせるか、それは自分次第である。
この4つの鉄板ルールを身につけて、上司や同僚、患者さんや患者さんの家族の心をわしづかみにしてほしい。それが人生の成功につながる。
平成30年4月24日