平成17~22年
「もし過去に帰ることができるなら、子供が小さくてかわいらしかった頃に戻りたいね」と妻に語ったことがあります。返事は当然「そうね。あの頃は本当に楽しかった」で、その後、妻の震える肩をそっと抱き寄せるつもりでした。しかし、妻の返事は私の想像を絶するものでした。「私は結婚する前に戻りたい」それから夫婦の会話は途絶えました。
今年の夏「17 again」という映画を妻と一緒に観ました。主人公はバスケットボールの将来を嘱望されたプレーヤーで、大学のスカウトからも注目されていました。スカウトが来ている大事な試合の直前に、彼女に妊娠していることを打ち明けられます。試合開始直後、彼はボールを放り出し、大学へ行くことを放棄し、彼女を追いかけ「君と僕たちの子供が自分の将来だ」と言って結婚します。結婚後の彼は、うだつのあがらないサラリーマンでした。昇進も後輩に遅れをとります。彼は大学に行くべきだったと後悔し、奥さんに不満をぶつけます。自分の不運をすべて奥さんのせいにするものですから、いたたまれなくなった奥さんは裁判所に離婚の手続きを申請します。彼は17歳の時のあの輝かしいバスケットの花形選手に戻り、今の自分とは違った道を歩みたいと願います。彼は思い出にかられて自分の高校に行きます。そこで用務員さんの姿をした神様に出会い、本当に17歳に戻りたいのかと聞かれて「YES」と答えます。すると、ある日突然17歳になります。高校生になった彼は、その高校で、いじめにあっている自分の長男、不良とつき合っている自分の長女に出会います。姿は17歳でも、彼は親としての心をもって自分の長男、長女を親身になって導き、そして、その親である自分の奥さんと仲良くなります。奥さんに「自分は本当はあなたの夫で、神様によって姿を変えられたのだ」と告白しますが信じてもらえません。再びオハイオ州立大学のスカウトが見に来ている大事な試合がやってきます。奥さんも自分の長男が出ているので応援に来ます。そこで彼の姿を見て、その仕草が17歳だった時の自分の夫と同じであることに気づき、人生のやり直しをしようとしている自分の夫の邪魔をしてはいけないと、その場を立ち去ろうとします。それに気づいた彼は、試合開始直後、彼はボールを自分の息子に渡し彼女を再び追いかけ、そこで元の自分に変わるのでした。
この映画を観て、妻は結婚する前に戻ったとしても、結局同じ道をたどることになるという強烈なメッセージを受け取ったのではないかと思います。過去は変えられませんが、考え方は変えることができます。あるのは「今」です。今を一生懸命に生きることなくして未来は切り開かれません。ある本の中に「あなたが虚しく生きた今日は、昨日亡くなった人があれほど生きたいと願った明日」と書いてありました。けだし名言。今日を大切に生きて行きましょう。
平成21年度分より