名誉院長の麻生だより
2016/12/28
今年も残すところあとわずかとなりました。みなさんにとって、どんな一年だったでしょうか。私にとっては、あっという間の一年でした。もしかすると、人の一生も同じかもしれません。
「時」 坂村真民
日の登るにも手を合わさず 月の沈むにも心ひかれず あくせくとして一世を終えし人の いかに多きことぞ
道のべに花咲けど見ず 梢に鳥鳴けど聞かず せかせかとして過ぎゆく人の いかに多きことぞ
二度とないこの人生を いかに生き いかに死するか 耳かたむけることもなく うかうかとして 老いたる人の いかに多きことぞ
川の流れにも 風の音にも 告げ給う声のあることを 知ろうともせず 金に名誉に地位に 狂奔し終わる人の いかに多きことぞ
生死事大無常迅速
時人を待たず噫々(ああ)
最後の二行「生死事大、無常迅速、時は人を待たず」という言葉は、曹洞宗開祖・道元が中国宋で修行中に記した日誌の中にある言葉です。禅寺の廊下には、修行の開始を告げる「木版」に書いてあり、「うかうかしていると、一日一瞬が空しく過ぎていきますよ。心引き締めて、いち早く修行に取り組み、悔いの無いようにしなさい」という警告の意が込められています。
一日は今の1秒の集積です。今を失う人は一日を失う人、そして一生を棒に振る人です。あっという間の一年は、あっという間の一生につながります。
「大切なのは過去でも未来でもない、一呼吸一呼吸の今である」という真民先生の言葉を胸に新年を迎えようではありませんか。
平成28年12月24日