平成17~22年
「麻生だより」を書き始めて今回で100回目になります。きっかけは、平成13年秋に厚生労働省の病院長研修会に出席したことでした。この研修会には、その当時、抗がん剤の多量投与を行い問題となった医大の病院長や消毒液の点滴で訴えられていた関東の病院の病院長も来ておられました。問題をかかえた病院長がたくさん来られていて、大変緊迫感のある研修会でした。この時、病院長がいかにして自分の考えを職員に伝えるかということの一つの手段として、給料袋にメッセージを入れると良いということを学びました。砥部病院に帰ってきてすぐに、これを実行に移しました。最初は病院の理念を皆さんに理解してもらおうと書きました。給料日にどんな反応があるのか楽しみにしていました。しかし、「先生、読みましたよ」と言ってくれた人は総婦長だけで、ほとんどの人は無反応、病棟のごみ箱に麻生だよりが捨てられているのを見てがっかりしました。それでもくじけませんでした。作業だけに終始しているこの病院に喝を入れなければならない。一つの方向性を持たせなければならない。そのためには、麻生だよりで職員に対して自分の思いを伝えることは絶対に必要であると自分に言い聞かせました。継続は力、積み上げていくことが大切と書き続けました。当時、病棟はほとんど一人で診ているような状態で、一週間のうち3回も4回も夜中に病棟からの電話で起こされ、病棟に呼ばれ、家は家では無く当直室でした。睡眠不足は肩こりとなり、肩がこっては文章を書こうという気になれず、最悪の場合には、給料日の朝3時頃から書き始めて9時にできあがるというようなこともしばしばありました。それでも書き続けていたある日、一人のヘルパーさんが、「先生の麻生だより、最初からずっと大切にファイルしています」と言って下さいました。本当にうれしかった。あれから8年、昼礼で私の考えを踏襲してくださるような発言が増え、この方たちが砥部病院を理念通りの病院に育て上げてくれるものと期待できるようになりました。
今年の目標は昨年の忘年会でも申し上げましたが、「さすがの砥部病院といわれるような病院になる」ことです。さすが総婦長、さすが兵頭さん、さすが梅木君など、個人個人の「さすが」が集大成されて「さすが砥部病院」となるのです。論語に「行くに径(こみち)に由(よ)らず」とあります。たとえ近道に見えても脇道や小さな道はやがて行き詰まるもの、常に「大道」を歩き公明正大であれという教えです。砥部病院の「大道」は、砥部病院の第一番目の理念「常に患者さんの立場に立って考え、行動すること」にあります。みなさんお一人お一人が、「さすが」と言われるためにはどうすればいいか、ウキウキワクワクしながら考え、行動し、この大道を歩んで欲しい。そういう願いを込め、この記念すべき第100回目の麻生だよりをお送りします。
平成22年分より