広島赤十字・原爆病院の元院長、平田弘先生は私の目標とすべき「徳」を持った人でした。長浜に住んでいた私の恩師上原先生の義理の兄にあたり、「中城君、いいワインを持ってきたよ。今すぐ飲みに来なさい」とよく電話をいただきました。この先生から学んだことは「いつも上機嫌で居るべし」という「徳」でした。
　4月26日朝3時24分、4月29日朝3時00分、同日朝9時、5月1日朝6時00分、5月3日朝2時40分、5月6日朝3時25分、5月10日朝0時53分、5月15日朝6時30分、5月17日朝6時23分（特養ひろた）いずれも死亡診断書を書くために、病院や施設に呼び出された時間です。
　熟睡中に起こされることには、慣れているものの、1週間の間に何回も起こされるとなると、体力、気力の限界を感じた月でした。
　病院では常に「上機嫌」でいようと誓っていたのに、寝起きの悪さから、不機嫌で申し訳なかったと反省しています。
　ご家族が到着していない時、ご遺体を一人にしてはいけないと、看護師さんやヘルパーさんが付き添う姿に感動しました。机の上にカルテ、診断書、私の印、朱肉、万年筆で線を引いてもにじまない物差しが整然と用意してあった心遣いに感謝しています。
　アメリカ建国の父の一人として知られるベンジャミン　フランクリンは、自分にとって実用的で、未だ自分に身に付いていない「徳」を厳選し、優先順位をつけて記載しています。（フランクリン自伝）
　１．節制　飽くほど食うなかれ。酔うまで飲むなかれ。
　２．沈黙　自他に益なきことを語るなかれ。
　３．規律　物はすべて所を定めておくべし。仕事はすべて時を定めてなすべし。
　４．決断　なすべきことをなさんと決心すべし。決心したることは必ず実行すべし。
　以下、５．節約　６．勤勉　７．誠実　８．正義　９．中庸　１０．清潔　１１．平静　１２．純潔　１３．謙譲の順で身に付けていくことを自分に課しました。手帳に13項目を縦方向に、日付を横方向にしたチェック表を作り、達成できなかった徳目に黒点を打つという方法で日常的に「自分の精神性」をチェックしていました。病室のチェック表はこれに習いました。転倒事故防止に大変役立っています。私たちも、それぞれ自分のオリジナルな「徳」を探し、日々チェックしてみると良いでしょう。

　平成28年5月24日