名誉院長の麻生だより
相田みつを氏が、母親のエゴについて書いています。「うちの息子は一人息子で、よそ様の子と違いまして大事に育てましたので、あんまり骨の折れることや、身体を荒っぽく使う仕事には向かないと思うんです。それに小さな会社や工場ですと何時倒産するかわからず不安ですから、できたら倒産のない大きな会社か役所のようなところが一番適当かと思うんですが、相田さんのお顔でどこか安定したいい職場をお世話していただければと思いまして……」これが世の親達の本音かもしれません。要するに、自分の子だけは、ラクして、いっぱいお金もらって、カッコいい生活をさせたい。そこで、氏は世の母親に対して次のことを訴えています。
1.ラクしてカッコよければ幸せか。逆に骨を折ることは不幸か。人間の本当の幸せは「充実感のある生き方」であって、骨を折らない、努力を必要としない仕事に充実感はないということ。
2.親亡き後、親よりも苦労することがいっぱいあるかもしれない、そのように腹をすえて子供の将来を見通すべきであること。
たとえ、親よりも苦労することがあっても、親よりもたくましく、親よりも粘り強く(根張り強く)、人生を生きぬいてゆく力と智恵とを子供に与えておく、それが一番正しい親の愛情であり義務だと思います。そのためには、負ける練習、恥をさらす練習、カッコの悪い体験を、できるだけ多く、子供にさせておくことだと氏は言います。人生の的を思うようにならぬ方に合わせておくと、失敗しても、へこたれないたくましい人間になれます。さらに、勝っても負けても本来の自分の価値には何ら変化がないという根本をしっかり押さえた上で、勝てば手放しで喜び、負ければがっかりして泣くという生きざまを教えておくことが大切なのです。
安樂選手率いる済美高校は東温高校に完敗しました。泣きじゃくる安樂君に上甲監督は「お前に悪い所は少しも無い。さらに大舞台目指して頑張れ」と檄を飛ばされました。負けても、安樂選手の価値にはいささかの変化もありません。さらに、たくましく、根張り強く自分の夢実現に向けて頑張ってくれるものと確信しております。
平成26年7月24日