平成17~22年
最近読んで感銘をうけた「心ふるえる瞬間」(エドワード・M・ハロウェル著、ダイアモンド社出版)のことを、ここに整理して書いてみようと思います。英語の原題は「Human Moment」で、直訳すれば、「人間としての瞬間」でしょうか。幸福について、著者は次のように書いています。 思うに私たちは、幸福というものを遠くに、大きく求めすぎているのではないでしょうか。自分はいつも物足りない。物足りないから満ち足りない。満ち足りないから幸福ではない。だから自分以外のどこかに、あるいは何かに、つねに満足や幸福を求めて飽き足りないというように。しかし幸福とは果たして、自分の外に、手の届かないものとして渇望するものなのでしょうか。幸福に必要な条件はみんなあらかじめ自分の中にそろっているのに、多くの人がそのことに気づいていない。したがってもしその気になりさえすれば、、だれもがいたるところに発見することができるもの。それが幸福の本質であり、心ふるえる瞬間そのものであると思うのです。もっと多くのお金、もっと多くの時間などと思わず、すでに手にしているもの、日々の暮らしのなかで身の回りに絶えず生起しては消えていく、心あたたまるさまざまな瞬間。それらを逃さずつかまえ、注意を向け、深く味わう必要があるのです。心がふれあい、つながる瞬間はいたるところ、そこかしこに存在しています。大事なものは、その時、その場、ありふれた日常生活のなかの、目の前にある小さくささやかなものを大切にすること。あって当たり前と思えるもののありがたさや真の価値に気づくこと。そして、それを素直に受け入れることなのです。 朝、病院の東側の堤防にムラサキツユクサが咲いています。よく見ると非常にきれいな、かわいらしい花をつけています。今まで全く見向きもしなかった雑草に対して感動することも、心ふるえる瞬間だと思います。
先日、直腸癌の方が亡くなられました。臨終の際、実の娘さんとお嬢さんが「お母さんありがとう」「お母さんありがとう」と何回も言いながら最期を看取られました。非常に感動的な最期でした。これもある意味で、心ふるえる瞬間でした。子育てをするときも、子供の一挙一動に幸せを感じたり、驚いたりすることも心ふるえる瞬間です。猫が自分の膝の上で尻尾を左右に振りながら眠っているときにも幸せを感じます。ささやかな喜びの瞬間ほど見逃しやすく、過ぎやすく、取り返しのつかないものはないのです。幸福とは、「ここよりほかの場所」に夢見るものではなく、自分の中、自分の周囲に見出すもの、「ほかよりここの場所」に発見するものなのです。仕事のなかでも心ふるえる瞬間を体験してみて下さい。
平成17年9月25日