名誉院長の麻生だより
「朋あり遠方より来るまた楽しからずや」という言葉が論語の中にあります。現代文にすると「友人が遠くから訪ねて来てくれることは本当に嬉しく楽しいことです」という意味になります。人生の最高の楽しみの一つは、仲のよい友人とともに酒をくみかわし、歓談することであるという、孔子の人間味ある喜びが、この一語から伝わってきます。
11月6日、私の留学時代の友人エリックが娘を連れて遠くアメリカ合衆国オハイオ州クリーブランドから私達に会いに来てくれました。今から24年前、私と妻はクリーブランドで留学生活をしていました。当時エリックはケースウェスタンリザーブ大学の医学生、私は医学博士修得後のポストドクタルフェローとして同じ大学で働いていました。エリックは15年間の教師生活のあと、アパート経営をしながら学費を稼ぎ学生生活をしていました。その4世帯アパートに偶然私達が住むようになったわけですが、非常に楽しい生活でした。
今回のエリックの訪問で昔話の中心に居たのは常に佳代(妻)でした。クリーブランドオーケストラのチケットを本当はセベランスホール(コンサートホール)に買いに行かなければならないのに、セベランスモール(ショッピングモール)に行き、とりあえず並んだ列が宝くじ売り場であったこと。アパートが火事になった時、皆寝巻姿で外に避難したのに佳代は着替えてから出て来たこと。銀杏の実を取りにお墓へ行ったのはよかったが、出口がわからなくなって迷子になったこと。長男の一歳の誕生日に一升餅を担がせて歩かせようとしたことなどです。あの頃佳代がベビーシッターをしていたハンナは3歳、来日したハンナは24歳、時間が経つのは早いものだとつくづく感じました。
考えてみれば大学を卒業していろいろな所に住みました。それぞれの土地でそれぞれの友達ができて、その友達と今でもこうして親交があるのは、「天然」と言われながらもいろんな事をしてみんなを楽しませてくれる妻の存在が大きいと感じています。再度英語で、
It is a wonderful thing to have a friend visit from far away.
平成25年11月23日