平成23年
宮城県南三陸町の戸倉中学校は卒業式前日、大津波に襲われました。校舎は破壊され、教諭と生徒の2人が死亡。廊下には卒業証書が散乱していて、卒業式を行う目途が立っていないということです。これまで当たり前と思っていたことを行うのが、困難となっている今、砥部中学校で卒業式が挙行され、感慨深いものがありました。水沼校長先生の「この卒業証書には、すべての人の思いが込められている」というお言葉は胸に響きました。中村剛志砥部町長は、「何故、月にうさぎが居るか」というお話をされました。先の年賀交歓会では、うさぎは、「自分の身を食べて下さい」と、たき火の中に飛び込んで黒こげになったのですが、卒業式では違いました。火に飛び込もうとしたうさぎを、さっと帝釈天が救い、月に送ったという話に変わっていました。あとで、町長さんに電話して聞いてみると、中学生向きに自分で話をアレンジしたとのことでした。さすが町長さん。町長さんの暖かい心にふれることができて幸せでした。
答辞は、当院の看護師加地さんの娘さんである加地汐音(しおね)さんが読みました。「おはよう、また明日ね、と毎日繰り返した三年間。卒業を意識し始めてから、平凡だった毎日、つまらないと感じた毎日が、かえがえのない毎日に変わりました。何気なく過ごした毎日が私にとってかけがえのない大切な毎日でした。(両親に対して)ふだんはふてくされていても、いつも味方でいてくれてありがとう。これからも迷惑をかけてしまうと思うけど、これからも私たちの一番の味方でいてください。友達大好き。一緒にがんばってきたのが、みんなだったから、みんなが一緒にいてくれてから、三年間が、かけがえのないものになりました。絶対に忘れません。これからは、別々の道に進んでいくけど、いつまでも大切な仲間に変わりはないよね。今まで本当にありがとう。どんなに大きな壁にぶつかっても、砥部中学校で出会った、たくさんの笑顔を思い出してがんばっていきたいと思います」と全文を覚えて、語りかけるような口調で話されました。すばらしい答辞で先生方も父兄もみんな泣いていました。私は過去にこんなすばらしい答辞を聞いたことがありません。最高の答辞でした。
最後にサプライズで、今年定年退職される校長先生に卒業生から「3月9日」の合唱のプレゼントがありました。当院石本看護師の息子さんが発起人で、歌う間、校長先生はずっと泣いておられたそうです。感動的最後でした。
汐音さんにはいろいろなことを教えられました。私たちはいつも患者さんの味方でいて、最期を迎えられる日まで、私たちのたくさんの笑顔に触れていただきたいと心の底から思いました。私たちだって命には限りがあります。「人生の卒業」を意識することで何気ない毎日を、かけがえのない日々に変えていこうではありませんか。
平成23年3月25日